はじめに

 都営地下鉄大江戸線が開通してからというもの、築地を訪れる人の数は増加の一途を辿っており土曜日ともなれば、年末のアメ横並みの混雑が、毎週のように繰り広げられている。

 この一種の“築地ブーム”に合わせて、テレビや雑誌で築地が取上げられる回数も飛躍的に増加。しかも、いわゆるグルメ番組や、街歩きの特集のみならず、若者向けのバラエティー番組や、OLさん向けの雑誌などにも取り上げられており、中高年だけでなく、より幅広いターゲットに向けて紹介されるようになってきたのだ。

 また、築地専門のガイドブックも複数出版されるなど、いま、まさに「築地ブーム」が本格化しようとしていると言って間違いない。

 ブームの盛り上がりを示すもう一つの証拠として、2003年の11月2日に開催された『江戸開府四百年記念 築地市場まつり』が挙げられる。このイベントでは、大規模な宣伝活動がされなかったにもかかわらず、13万人もの人が築地市場を訪れた。当日は、ありとあらゆる飲食店の前に長蛇の列ができ、また、通路と言う通路が、まさに立錐の余地もない大混雑となった。


 さて、これまで築地関連の書籍と言うと、築地市場で働く人の視点による、世間からは乖離された市場内部の不思議世界を紹介するといった、一種の内幕ものが主流であった。しかし、本書では、築地を訪れる人の最大の関心事である、「いま、築地で本当に美味しい店」の紹介に最大の力点を置いている。
 しかも、単なるガイドブック的に美味しい店を紹介にするだけに留まらず、現在、築地で起きている新興寿司屋の開店ラッシュの背景を解説し、さらに、偏向したマスコミ報道にメスを入れたうえで、初心者の人でも確実に美味しい店に辿り着くための術を指南している点で、他の築地関連書籍やガイドブックとは趣を大きく異にする。


 2003年4月、私はテレビ東京の人気番組「TVチャンピオン」の築地王選手権で優勝し、"築地王"になった。築地王になってからは、ある種の使命感が宿り、ますます築地通いに力が入るようになった。幸いなことに、この街でご商売を営む方々や、実際に飲食店を開いている方々とも親しくしていただくことができ、外からではなかなか知りえないさまざまな事柄について教えを受けることが出来た。おかげさまで、この街に関する知識は、番組出演時に比べて、桁違いに増幅したと自負している。
 
 本書に盛られた情報のすべてが、この街に日参し、自分の目と耳、そして舌で収集した、これまでの研鑽の結晶である。ご一読いただいた後、あなたの足が、食のワンダーランド・築地へ向かったなら、筆者としてこれ以上の喜びはない。

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