食材の宝庫・浜松(2004年2月7日〜8日)
2004年2月7日(土)
今日はいよいよ待ちに待った「遠州灘の天然トラフグを食いに行こうツアー」である。

もともとは、「10数年前から海流が変化し、遠州灘でトラフグが大量に水揚げされるようになり、今では、国内で水揚げされるトラフグの6割〜7割が遠州灘でとれる。これまで、ほとんどが下関に送られて、”下関フグ”として世に出てたが、地元でも加工施設を設け、遠州灘フグとして売り出そうとしている。」という話から企画されたツアーだったのだが、話が進むにつれ、「”浜松”といったら鰻だろ!」「スッポンの養殖も日本一だ」などと、話は拡大の一途を辿った。

最終的には”フグ・鰻・スッポン=浜松の美味を食べ尽くす”、「人間フォアグラ製造ツアー」へとその姿を変えていった。
この日ばかりは、痛風への恐怖やウェイトアップには目をつむり、日本でも有数のこの食材の宝庫を堪能する。

さて、まづは鰻。
事前に”櫃まぶし”か”鰻重”かの選択をしなくてはいけなかったので、かなり悩んだ。

結局は、名古屋に近いという理由で”櫃まぶし”を選んだのだが、今回ご案内をお願いした地元の方に訊くと、浜松では”関東風の鰻”を出す店、”関西風の鰻”を出す店、など実に多くのバリエーションがあり、「10回くれば10通りの店に連れてくことも出来る」とのコト。

さすがは、日本を代表する鰻都(マント)である。

連れて行ってもらったのは、「うな炭亭」というお店。
もともとはテイクアウト専門店だったらしいが、あまりの評判のよさに着席の店を構えるに至ったという折り紙付きの店である。

先付けに、”白焼き”と”肝焼き”をいただいた。
”白焼き”は、しっかりと脂がのっているが、皮が香ばしく上品。
”肝焼き”は通常見慣れているサイズのものに比べて、とてつもなくデカイ!
トロッと、コリッの2種類の食感が同時に楽しめて、ビールとの相性抜群。

次は、いよいよ”櫃まぶし”。
最近は、東京でも”櫃まぶし”を出す店も増えてきたので、説明は不要だと思うが・・・
一杯目はよそったマンマ、二杯目は葱や胡麻の薬味をのせていただき、最後はだしをかけてお茶漬けで〆る。
タレは、結構甘めで主張が強い。次に、葱が加わることで、全く味の趣を変えてしまうのは、結構な驚きであった。
最後のお茶づけでかける出汁は、かなり濃厚にとられた昆布だしで、、、
これが、鰻のタレや脂を喧嘩することなくつつみこんで、大変美味い。

さすがは鰻を知り尽くした街・浜松。極めて完成度が高い!






さて、夜はいよいよメインイベントのフグ。
泊まった宿の若旦那の説明によると、フグをメニューに加えたのは今シーズンが初めてとのこと。先ずは、地元への浸透を図るために、量を控えめにして価格を抑えているとのコトであったが・・・

とりあえず、メニューを紹介しておくと、”先付け”、”酢の物”、文字通り皿の模様が透ける”テッサ”、3キレほどしかフグの入っていない”テッチリ”、”茶碗蒸し”、人差し指の先ほどの”唐揚げ”、”焼きフグ”、そして、なぜか”鰻の蒲焼”。それに、”雑炊”と”吸い物”。
・・・正直言って、期待水準の半分にも満たない満足度であった。

今年が初めてのトライであること、予算に制限のある旅館の料理であること、などなど、様々なハンデがあることは承知している。しかし、今日の食後「フグ食った感」が伴わないメニューの構成は抜本的な見直しが必要であるといわざるをえない。

「まづは価格を抑えてブランドの普及を!」という考えは、わからなくもないが、多くの日本人にとってフグというのは、もともと”ハレ”の食べ物。自然、期待値は大変高くなる。その期待に応えられないのであれば、なまじ”フグ”を前面にたてて、期待させることは逆効果でしかない。

逆にある程度高い価格設定をしても、味覚的に納得させるものがあれば、お客の満足は十分に獲得することは可能だし、その方が口コミに乗りやすいので、結果的により早くブランドの浸透を図ることが可能である。

また、フグのブランドとして先行している”下関”に、今後追いつき追い越そうという意欲があるとすれば、既存の料理法を踏襲していてはダメである。「天然フグなので、素材の違いをわかってくれるハズ」と考えるのは、供給者側のエゴでしかなく、食べ手側に一口で理解・納得できるわかりやすいプレゼンテーションの方法が必要である。

その意味では、今日のメニューにもあった”焼きフグ”には、大いなる可能性を見出すことが出来る。かなり厚めに切られて出されることもあり、加熱した後のフグの食感と凝縮された旨味が味わえ、それこそ天然フグならでは違いを発揮するには恰好のメニューであり、十分”遠州灘フグ”の看板メニューとして通用する味わいである。
但し、1人前2切れではあまりに寂しい。思い切って、他の料理を全廃し、1人前十切れ位の”焼きフグ”を、「天然フグの本場だからできる新たなメニュー」として前面に出すくらいの割りきりがもてた時、初めてブランド化への第一歩が始まるのではないだろうか?

「いい素材を持っているのに惜しい!」これが率直な感想。
「全然ダメ」ではなく、「まだまだでんなぁ〜」ということで、今後の努力に期待したい。
2004年2月8日(日)
さて、浜松2日目。

お昼は、フグと並ぶメインイベント、スッポン三昧である。
向かったのは「桝形」という明治24年創業の懐石料理店。

特別にしつらえてもらったお昼のスッポンコースは、
”先付け”、”メジマグロ・カンパチ・ヒラメのお造り”、”お吸い物”、”血の焼酎割り”、”スッポン鍋”、”茶碗蒸し”、”肝の刺身”、”雑炊”、そして、”デザート”。
スッポンと言う食材は不思議で、鶏肉に似た食感と味わいを持った部位があるかと思えば、骨に近い部分は魚に近い風味を持つ。もちろんエンペラ部分を中心とした、プリプリのゼラチン質も醍醐味の一つだ。

今回いただいた料理の中では、”茶碗蒸し”が白眉!
そうではなくても濃厚なスッポンからとった滋味溢れるスープを、
更に煮詰めて濃厚にした餡がかかっていて、これが抜群に美味い。





この後、浜松市内でラーメンを一杯、更に、静岡に移動して”静岡おでん”を食ったのだが、、、さすがに胃腸が疲労困憊。

美味いもの食うって疲れる、、、のかも!?